信じてもらえないかもしれませんが… あなたを愛しています
親子
目覚めたら、『夫』はいなかった。
夫と呼んで良いのか少し迷いはあったが、
夫婦の契りとやらは結んでしまったのだから、戸籍も実質も『妻』になったのだろう。
独りだけのセミダブルベッドの上で、彩夏は昨夜の事を思い出していた。
最初は振りほどこうと必死になったはずだったのに、いつの間にか
彼に応えてしまった自分が恥ずかしくてたまらなかった。
身体のあちこちに昨夜の名残があるような気がして、部屋を出て誰かに会うのが億劫だった。
ゆっくり体を起こすと、目に留まったものがある。
シーツの汚れを見つけた以上、布団に隠れているわけにもいかない。
お節介な真由美に見られる前に自分で洗濯してしまおう。
シーツを力いっぱい引っ張って、ベッドから剥がした。
ツキンと下腹部が痛み、トロリと流れる物を感じた。
確かに、樹は私を抱いた。
ようやく実感が湧いて来た。
これが『妻』の実感なのかと、彩夏は初めての事ばかりで戸惑っていた。
『もしかしたら、妊娠出来るかも…。』
彼は避妊しなかった。
『子供なら、俺と作ればいい』と言っていたはずだ。
慌てて、頭の中で生理の周期を確認した。
生理不順気味だから100パーセントではないが、可能性はある。
『樹との間に、子供が出来たら…。』