信じてもらえないかもしれませんが… あなたを愛しています
あの頃の事を思うと胸が痛む。何故、お互いに意地を張っていたのだろう。
ただ会って、話をすれば良かっただけなのに。
『だけど…私たちはまた何も考えずに…一時の感情に溺れてしまった。
夫婦の真似事を…していたのね。
江本さんのせいじゃない。私たちが人生に対して甘かっただけ。』
『そんな…』
『短い時間だから何とかなっただけよ。
お互いを良く知らないままで、結婚生活が上手くいく訳がない。
彼は自分の事は何も話してくれなかったし、
私も仕事を捨てて、彼に飛び込んでは行けなかったわ。』
『せめて、私には話して下さってたら…。』
彩夏は、彼女のせいでは無いと必死で訴えた。
『身勝手でごめんなさい…わがまま言ってごめんなさい、江本さん。』
江本は、ただ黙って彩夏の話を聞いてくれた。
彩夏の、子供と二人で生きていく決意は固かった。
独りで考え、独りで決めてしまった事だったが
樹と別れた理由を誰かに聞いてもらいたかったのかもしれない。
『それでも、樹さんは彩夏さんの事を…。』
江本は、樹が彩夏を大切に思っていたと何度も告げた。
『あのころ…私の心はズタズタになってしまったの。
彼が他の人とも付き合っていて、子供が出来たかもしれないなんて…
マスコミの報道を鵜呑みにしたのは樹さんを信じる事が出来なかったから。』
『あのスキャンダルのせいだったんですね。
だったら、もう一度、話し合われてはいかがでしょう?』