ホラー短編集
ゴミ捨て場
これは数年前私が経験した話です。
出勤前、ゴミ捨て場に立ち寄った瞬間コゲついた匂いが鼻孔を刺激しました。
「おはようございます」
「あ、おはようございます」
いつも愛想よく話しかけてくれるご近所さんに、私はペコリとお辞儀をして答ました。
「今日もお仕事? 頑張ってね」
「はい。ありがとうございます」
ごく普通にゴミを捨てて戻って行くご近所さんに、わたしは首を傾げました。
何も匂わないのかな?
クンクンと鼻を動かすようにして匂いを嗅いでみるけれど、コゲ臭さはいつの間にか消えていました。
それから数日後。
私はいつも通りゴミ捨て場に来ていました。
燃えるゴミを置いた後、顔をしかめてしまいました。
「やっぱり、なんかコゲ臭い……?」
しかも今日はその臭いがキツクなっているように感じられたのです。
「おはようございます。今日も早いんですねぇ」
「あ、おはようございます。あの、なんだかここってコゲ臭くないですか?」
「えぇ? 臭いかしら?」
私の質問に首を傾げるご近所さん。
やっぱり私の勘違い……?
そう思いながらゴミ捨て場を出た瞬間、低いうめき声が聞こえて来た気がして振り向きました。
しかし、そこには誰もいないのです。
「どうしたの? 仕事で疲れてるんじゃない?」
「そうかもしれないですね」
私は愛想笑いを浮かべ、仕事へと向かったのでした。
だけど、それは疲れのせいなんかじゃなかったんです。
その日の夜、車でゴミ捨て場の前を通りかかった時でした。
ゴォォ!という大きな音に思わずブレーキを踏んだんです。
確認してみると、ゴミ捨て場が炎に包まれているのです。
「大変!!」
慌てて車を下りてゴミ捨て場へと向かうと、その中に黒い人影が見えたのです。
その人影は炎の中で暴れながら「ううううぅぅぅぅぅぅぅぅ」と、低い唸り声を上げているではありませんか。
「大丈夫ですか!?」
そう声をかけてゴミ捨て場を開けた瞬間……。
炎も人影も嘘のように消えてなくなり、そこには焦げ臭いにおいだけが残っていたのでした。
あのゴミ捨て場で昔何があったのか、今でも恐ろしくて確認できずにいます。
そして時折コゲ臭さを感じても、ご近所さんと同じように何も気が付かないフリをするのでした。
END
出勤前、ゴミ捨て場に立ち寄った瞬間コゲついた匂いが鼻孔を刺激しました。
「おはようございます」
「あ、おはようございます」
いつも愛想よく話しかけてくれるご近所さんに、私はペコリとお辞儀をして答ました。
「今日もお仕事? 頑張ってね」
「はい。ありがとうございます」
ごく普通にゴミを捨てて戻って行くご近所さんに、わたしは首を傾げました。
何も匂わないのかな?
クンクンと鼻を動かすようにして匂いを嗅いでみるけれど、コゲ臭さはいつの間にか消えていました。
それから数日後。
私はいつも通りゴミ捨て場に来ていました。
燃えるゴミを置いた後、顔をしかめてしまいました。
「やっぱり、なんかコゲ臭い……?」
しかも今日はその臭いがキツクなっているように感じられたのです。
「おはようございます。今日も早いんですねぇ」
「あ、おはようございます。あの、なんだかここってコゲ臭くないですか?」
「えぇ? 臭いかしら?」
私の質問に首を傾げるご近所さん。
やっぱり私の勘違い……?
そう思いながらゴミ捨て場を出た瞬間、低いうめき声が聞こえて来た気がして振り向きました。
しかし、そこには誰もいないのです。
「どうしたの? 仕事で疲れてるんじゃない?」
「そうかもしれないですね」
私は愛想笑いを浮かべ、仕事へと向かったのでした。
だけど、それは疲れのせいなんかじゃなかったんです。
その日の夜、車でゴミ捨て場の前を通りかかった時でした。
ゴォォ!という大きな音に思わずブレーキを踏んだんです。
確認してみると、ゴミ捨て場が炎に包まれているのです。
「大変!!」
慌てて車を下りてゴミ捨て場へと向かうと、その中に黒い人影が見えたのです。
その人影は炎の中で暴れながら「ううううぅぅぅぅぅぅぅぅ」と、低い唸り声を上げているではありませんか。
「大丈夫ですか!?」
そう声をかけてゴミ捨て場を開けた瞬間……。
炎も人影も嘘のように消えてなくなり、そこには焦げ臭いにおいだけが残っていたのでした。
あのゴミ捨て場で昔何があったのか、今でも恐ろしくて確認できずにいます。
そして時折コゲ臭さを感じても、ご近所さんと同じように何も気が付かないフリをするのでした。
END