ホラー短編集
ロッカー
「ゴメン、今このロッカーしか空いてないんだ」
申し訳なさそうにそう言われてあてがわれたのは、本当に古いロッカーだった。
灰色のロッカーはあちこち錆びつき、開閉の時にギィィィと嫌な音が鳴る。
それでも新しいロッカーが来る数日間の我慢だと思い、あたしは何も言わずそれを使うことにした。
「そのロッカーちょっと古すぎるよね、大丈夫?」
会社の先輩が心配してそう声をかけてきてくれたけれど私は笑顔で「大丈夫です」と、返事をした。
だけど本当は1つだけ気になる事があった。
それはロッカーの奥の赤いシミだった。
一体どう使ったらロッカーの奥に赤いシミができるのかわからないけれど、とにかくそれだけが薄気味悪かった。
そこで私は好きな芸能人のポスターを持参し、シミの上に貼りつけることにした。
これで気になる部分はなくなった。
「明日には新しいロッカーが搬入されるらしいよ。よかったね」
「はい。安心しました」
そう言ってロッカーを開けた時だった。
貼っていたポスターの上がはがれているのが見えた。
赤いシミが当初よりも大きく広がっている。
「本当によかったよ。今まで黙ってたけどさ、そのロッカー使ってた社員さんひどいイジメにあって自殺しちゃったんだよね。たしかそのロッカーに閉じ込められた事もあってさぁ」
先輩の言葉を最後まで聞く暇もなかった。
ロッカーの赤いシミから伸びて来た手が私の腕を掴み、そのまま真っ暗な闇の中へと引きずり込まれたのだった。
END
申し訳なさそうにそう言われてあてがわれたのは、本当に古いロッカーだった。
灰色のロッカーはあちこち錆びつき、開閉の時にギィィィと嫌な音が鳴る。
それでも新しいロッカーが来る数日間の我慢だと思い、あたしは何も言わずそれを使うことにした。
「そのロッカーちょっと古すぎるよね、大丈夫?」
会社の先輩が心配してそう声をかけてきてくれたけれど私は笑顔で「大丈夫です」と、返事をした。
だけど本当は1つだけ気になる事があった。
それはロッカーの奥の赤いシミだった。
一体どう使ったらロッカーの奥に赤いシミができるのかわからないけれど、とにかくそれだけが薄気味悪かった。
そこで私は好きな芸能人のポスターを持参し、シミの上に貼りつけることにした。
これで気になる部分はなくなった。
「明日には新しいロッカーが搬入されるらしいよ。よかったね」
「はい。安心しました」
そう言ってロッカーを開けた時だった。
貼っていたポスターの上がはがれているのが見えた。
赤いシミが当初よりも大きく広がっている。
「本当によかったよ。今まで黙ってたけどさ、そのロッカー使ってた社員さんひどいイジメにあって自殺しちゃったんだよね。たしかそのロッカーに閉じ込められた事もあってさぁ」
先輩の言葉を最後まで聞く暇もなかった。
ロッカーの赤いシミから伸びて来た手が私の腕を掴み、そのまま真っ暗な闇の中へと引きずり込まれたのだった。
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