魔法の恋の行方・わがままな使い魔(シリーズ2 クラリスとアンバー)

交流会7日・穴ぼこ 23-26ページ

<平原の穴ぼこ・16時>

「いたぁあい!!」
クラリスは声をあげた。

「痛いのはこっちだ!」
アンバーが下で怒鳴った。
アンバーの上に乗っかっていた。

「ああ、ごめん・・」
クラリスが身体の位置をずらし、
そして上を見上げた。

空が丸く切り取られて、
雲が流れていくのが見える。

「この穴はなんなんだ?
これって登れるかな」
アンバーも上を見上げた。

「ここまで深いと無理ね」
クラリスはため息をついた。

「でも、制限時間を過ぎて、
戻らなかったらミエルか
イ―ディスがすぐ探すだろう?」

アンバーは
山の準備をしておいて良かったと
思った。
とりあえず
水と食料とナイフはある。

「そうね・・」
クラリスはもう一度上を見上げた。陽が陰ってきている。

ここは山に近い。
夕方から急速に、温度が下がるだろう。

クラリスは、丸くなって膝を抱えた。
さすがに寒くなってきている。

この狭さでは火を焚くことは
無理だ。

その様子を見て、
アンバーは急いでマントを脱いだ。
「これ、君が使えよ。僕は何とかなるから」

クラリスはあきれたように言った。
「あのねぇ、あんたが風邪ひいて、具合悪くなったらどうするのよ」

「でも・・・」
「今、私たちは協力しなくちゃ
いけないでしょ!」
クラリスははっきりと断言した。

「イ―ディスはいつも言っている。
(あるじ)と使い魔が
お互い協力しなくては、
結果が出せないって!」

今の状態では
食料より、この寒さをどうするかよ!」
アンバーは感心した。

クラリスは
冷静にこの状態を分析している。

「だから・・その・・
嫌かもしれないけど、
こうするしか方法は
思いつかない」

クラリスはそう言うと、
アンバーの隣に座り込み、身体を
ぴったりとつけた。

そして
マントを毛布をかぶるようにして、すっぽりとくるんだ。

「あの・・
あんたの腕が邪魔なんだけど」
「え?どうしたら・・」
「まったく、もうっ!」

クラリスは
アンバーの腕をつかんで、
自分の肩に回した。

「こうして寒さをしのぐ・・
あとは待つしかないの」

クラリスはアンバーに寄りかかった。
体温が伝わる。
アンバーは顔をそむけた。

赤くなっているのを
クラリスに見られたくない。

腕の中のクラリスは
思っていたより、ずっと華奢で小さい。
そして子猫のように柔らかい。

陽が落ちはじめ、
穴の中は暗くなってきた。

何か話しをしていないと
不安になる。
何でもいい。

アンバーは口を開いた。


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