魔法の恋の行方・わがままな使い魔(シリーズ2 クラリスとアンバー)
<グランビア家の館・クラリスの部屋・満月の次の日・早朝7時>

満月の夜、
クラリスはベッドにある卵を
ポンポン叩いた。

「何が産まれるか・・
明日が楽しみだわ」

そうして、
クラリスはいつものように
卵と一緒に眠りについた。

翌朝
クラリスは、隣に誰か寝ているのに
気が付いた。
「えっ?えーえええーー!!」

隣に寝ていたのは男!
しかも成人!
しかも、裸だった!

クラリスは、
ばね仕掛けの人形のように、
飛び跳ねて部屋の隅に逃げ込んだ。

寝返りを打った男が、
クラリスを見た。

クラリスも男を凝視した。
「ああ・・君が・・」

男がまだ、<寝ていたいのに>
と言った感じで物憂げに言った。

「俺はイーディスだ。
君は・・クラリス・・
グランビアだね」

クラリスは
ショックから抜けきれないというふうに、
あごをカクカクさせてうなずいた。

「まだ、小さいな・・・」

イーディスは
クラリスを値踏みするように
上から下まで見た。

クラリスがやっと口を開いた。
「あの・・何か着てくれる・・・?」

「これはレディの前で・・失礼。
と言っても、まだ君はガキだな」

イーディスは<めんどうな>
と言ったように、指を鳴らした。
その瞬間に
蝶ネクタイ、スーツ姿に変身した。

そして、
靴のままずかずかと、クラリスの布団の上を歩き、ベッドに座った。

クラリスは
ベッドが汚れるのが嫌だったが・・言えない。

「ここに座りなさい」

イーディスがクラリスに、
椅子に座るように指示した。
クラリスは、彼の正面に座った。

この・・偉そうな使い魔は・・・

紫がかった紅い髪。
赤系が入るのが、グランビアの家系の特徴だ。

使い魔もそうなのだろう。

冷たい感じがする緑だが、
時折
黄色、いや金色に変化する瞳。

使い魔のなかでも、
相当にハンサムの部類に入るだろう。
クラリスは思った。

イーディスはふんと鼻を鳴らし
「君は孵化(ふか)の約束を、
半分しか守らなかった。
だから・・・」

クラリスは、
一瞬<まずい>という表情をしたが

「私が・・(あるじ)でしょ・・?」

イーディスは小ばかにしたように
笑った。
「取りあえず、<仮>(あるじ)ではあるが、

・・・俺も半分しか言う事をきかない」

「そんな・・」
クラリスは困った顔をした。

イーディスは伸びをして
「気が向いたら、きいてやる」

これではどちらが、(あるじ)なのかわからない。

クラリスは母親に、
どのように報告すればよいか
考えている間に、イーディスは消えた。


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