となりの紀田くん-season 2-
「先輩お疲れ様です!」
レコーディングルームから出てきた
先輩に差し入れのペットボトルの
飲み物を渡すと
「ゆあちゃんありがと」
と言ってふわりと微笑んだ。
まぁ、でも先輩は普通に
イケメンの部類に入ると思う。
声だけじゃなくて。
まぁ、でも正直そっちには興味なくて
私が好きなのは日丸先輩の声のみ!!
っていうか…恋愛として
好きでどうしようもないのは
紀田だけだから…なんか他の
男性をそういう目で見ることが
まずないわけで…
「それじゃ、次…私なので行ってきます」
そう先輩に告げて
今度は私がレコーディングルームの
中へと足を踏み入れたーーーーーー。
正直、何度入ってもこの中の
雰囲気には緊張する。
声優ってのは演技力を働かせる
もんだから、自分のキャラに
合ってないキャラクターだろうが
なんだろうが心込めて死ぬ気で
演じなくてはならない
まあ、さすがにあからさまに違うのは
たぶん避けられてるはずだが…
私と先輩が今、レコーディングしてるのは
今年の7月頃に放送予定の恋愛アニメで
私がヒロイン役、先輩がヒーロー役として
任命されたのだ。
実際のところ…このヒロイン
私の性格とはだいぶ正反対
大人しくて可憐で女の子らしいキャラ。
私はぎゅっと拳を握りしめると
顔を上げて真剣な顔つきになる
これがプロの意識
新人だろうがベテランだろうが
それは変わらない。
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「先輩!私…ずっと先輩のこと好きでした!!…付き合ってください!」
「俺も…お前のこと好き…すげー嬉しい」
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まぁ、ずいぶんベッタベタな
恋愛アニメだこと…
と思いつつもなんとか
レコーディングを終え
部屋から出ると
今度はすかさず先輩が
私にペットボトルの
飲み物を差し出してきた。