となりの紀田くん-season 2-
「昴さんはこの会社で社長になる為に、いろんなものを犠牲にしてきた。この会社を乗っ取るつもりでいる。父さんも薄々感じてはいただろ?」
俺の言葉に小さく頷いた。
「俺はそれを阻止したい。それをすれば昴さんはきっと後悔すると思うんだ。そして完全に人としてダメになってしまう。そんな最悪な事態は避けたい。
確か1年後に次期社長先行発表会があるよな?俺、あれに選ばれて昴さんと決着をつけたいんだ。次期社長になる為に。親だからって甘やかさなくていいてか甘やかされたら意味無い
本気で勝負したいんだ。昴さんと。」
父はよく言ったみたいな顔をすると
「だそうだよ…昴」
社長室の入口とは別の扉に
視線を向ける
え?
同じように扉に視線を
うつした俺と要は絶句した
「お兄ちゃん!?いつからそこに!?」
「最初からずっといたよ要」
扉から現れた昴さんは
フッと要に笑いかける
要はその笑顔を見て
ビクッと体を揺らし
顔を引きつらせる
顔は笑っているけど
目が笑ってない
まるで相手を威圧して
固まらせて石にでも
変えてしまうのでは
ないかと思うぐらい
昴さんの笑顔は冷めていた。
きっと要もこの有無を言わさない
束縛的な冷めた笑顔に逆らえず
ずっと苦しめられてきたんだな…
俺は中学の頃に要と付き合っていたのに
そんな心情に気づいてやれなかったなんて
どちらにせよ彼氏失格だ。
だからこそ。優亜を守りたい。
この人、自分で気づいてないけど
おそらく優亜のこと本気で好きに
なってきてる。
きっとこの会社を父さんから奪って
俺から最愛の人を奪うのが目的
まあ、1つ言わせてもらうと
奪うだけの相手に本気に
なっちゃダメでしょって。
まあ、自分が言えたことではないが……
けど俺は会社を手放す気も
優亜を手放す気もさらさらない。