白鳥学園、いきものがかり



入学式が終わった辺り…だと思う。

教室までの道を一人で頑張って歩いていた。みんなはそれに合わせて歩いてくれたけど、入学式は私のせいで出られなかった。

私が落ち着くまで一緒に居てくれた…本当は出て欲しかった。

だけど正直、凄く安心した。やっぱりみんなといると不安な事は無くなるみたい。


「紬、無理そうなら帰るか?」

「…ううん、大丈夫」


本当は帰りたい気もする。
…だって怒られるの分かってるから。


「紬ちゃん、息切れしてるけど。本当に一人で最後まで上がれる?」


ゼーハー…。


「だ、だいじょ…ぶ。これから…通うから…これ、ぐらい…」


病院生活でもエレベーター優先だったのが、ここに来て響くなんて…!

そうは言うけど、病室外もあまり出た事も無かったから、歩くって事も不安定なんだけど。

自室も二階じゃなくて一階。
家の中でも上ってこなかった。


どうしよう…もう不安しかないよ…。


支えられながらようやく教室前に到着。
聞こえてくるのは、帰り際の楽しそうな声だった。



「あー…、終わっちゃいましたね」



凪が苦笑い。

サーっと血の気が引く感じがして、ふらりと紘に倒れ掛かった。


「おっと」


軽く受け止められる。

そ…そんなぁ。
折角ここまで頑張ったのに。

折角、みんなが一緒にいてくれたのに…。


初日からこんな調子でちゃんと通えるの私…?


「ご、ごめんね…私がのんびり歩いてたから…」


歩幅合わせてくれたけど。
みんなならすぐについたよね。

足長いから特に。


「紬、気にし過ぎ。俺は一緒に歩けるの、嬉しい」


マスクをずらし累が言う。
本当に嬉しそうな雰囲気だった。


「もう帰っちゃお~。紬ちゃん、疲れたでしょ?」

「だ、だいじょぶ…!」

「やせ我慢しないの~」


バ、バレてらっしゃいます。

伊達に10年の付き合いじゃない、なんて言われてるみたいな感じがした。

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