白鳥学園、いきものがかり



…え?



「それだけ?」

「うんっ。それだけ~」



まさかそんな簡単な事だったとは。
…そんなお願いならいつでも撮ってあげたのに。


「もっと近くに寄って?」


自分達の顔よりも上に向けられるインカメラ。


「もっとって…今も結構近いよ?」

「もっと僕に近付いて。じゃないと見切れちゃう~」


撮り慣れているんだろうなぁ。
上目遣いも角度も翔にとっては簡単なんだね。

ぐん、と近付いて翔の肩に頬が乗りかける。


「紬ちゃん、も~っと来て?」

「え?もっと?もう見切れないよ?」

「だめだめ~。あとで編集するんだから~」


編集??写真を???


何をどうするか分からないけど言われるがままで翔の身体に近付いた。呼吸が近く感じる程の凄く近い距離。

流石に近いかなって思ったけど。



「うん。ばっちり。行くよ~?」



翔が満点を出してくれたので安心した。

カメラのレンズを見るよう指示され、画面ではなくレンズの方を見る。




「はいっ。チーズ」





カシャッ、と電子音が鳴った。
それにかき消されるように、リップ音が響く。



「………え?」

「うん。上手」



離れて行く翔の顔。
触れた唇。驚く私。



…いま…唇。




「ごめんね。紬ちゃんの奪っちゃった」





そう言って不敵に笑った。


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