白鳥学園、いきものがかり



あまりの事に思考が一時停止。
目の前でひらひらと翔が手を振る。



「ッ──────…!」



翔の身体を押し、唇を抑えた。


「なんで…」

「うふふ、かわぁいい」

「ふ、ふざけないで…!」


だって、こんなの。



「僕でがっかりした?」



…っ、それは。



「寧ろ僕で良かったでしょ?知らない人とするより、」

「っ…だけど、私」



──────ファーストキスだったのに。




「翔は…慣れてるかもしれないけど、私は、」

「僕が慣れてる?誰が言ったのぉ?」



え?…だって、翔なら。

PVでよくそう言うシーンが出て来てたし。
新曲の物なんてかなり近かったし…唇触れそうだった、よね?



「僕ね。紬ちゃんとしか(・・)した事無いよ?」

「……へっ?」



変な声が出てしまった。
正直に、「意外」と思ってしまったから。


「だって…え?…えっ?でも、」

「うふふ、紬ちゃん。そんなに挙動不審にならないで?」


でも…だって。

そんな事ばかり巡らせる。



「僕の事きらい?」



首を横に振る。


「僕との、いやじゃなかったでしょ?」


っっ…、


顔が赤くなる。
そして私は小さく首を縦に振った。


翔はまた笑うと、私の頬を包んだ。



「これは僕たちだけの秘密にしよっ?」

「っっ…う、ん」



私は目を強く瞑ったまま、頷いた。


< 132 / 157 >

この作品をシェア

pagetop