白鳥学園、いきものがかり
向かって来た手を止めたのは実くんだった。
私の肩を抱く実くん。凪から視線を逸らしながら、ゆっくりと前を向いた。
手を差し出す傑がいた。
優しくてかっこいい傑。
「おいで」
無意識に私は…その手を取ってしまった。
それの行動がどれだけ凪を傷付けるのか、そんな事を考えずに——————、
「っ…は、…?」
実くんの腕からするりと抜けて、私は傑の胸の中へ移動した。
「頬が冷たいな。紬は低体温なんだ、しっかり着ないと駄目だろう?」
肩にかけられていたブレザーに手を通す。
大きくてぶかぶかで、傑の匂いがする。
「鷹埜…せんせ、俺と紬を学校まで連れて行ってください。いいですよね?ついでだろう?」
ニヤリと笑いながらそういうと、実くんは苦虫を噛み潰したような顔で頷いた。
「……ま、って…えっと、」
”凪も一緒に。”
そんな台詞は出ることは無かった。
「……んで、
俺じゃなく、傑…なんだ……?」
今にも泣き出しそうな顔で私の腕を掴む凪。言葉の一つ一つが震えていた。