白鳥学園、いきものがかり
「っ…な、ぎ…」
ああ、そっか。
私は…凪を傷付けてしまったんだ。
「俺…すみませ…紬を、怖がらせるつもりは………、」
「凪、その手を離せ。紬が怯えるだろう?」
……え、?
傑のその言葉に目を見開いた。
だって今は……、
全然怖くなんてなかったから。
「凪、えっと…私、」
気持ちが落ち着いたら、”怖い”なんて感情無くなっていた。
だから、凪に「ごめんなさい」するはずだったの。
「何に対しての”ごめん”なんだい?」
耳元で囁いた傑。
「……何って、えっと」
「紬は何もしていない。分かるだろう?」
「でも、その…私、凪を傷付けて、」
…ズキン、
凪に掴まれた手首が痛む。
ずっと、痛いまま。
「傷付けられたのは、紬も同じだろう」
制服の袖から除いた痕は赤く、黒くなっていた。傑はそこにガーゼタオルを巻いて優しく撫でる。
少し濡れていたそのタオルは、ひんやりとしていて、痛みが引いていく気がした。