白鳥学園、いきものがかり
髪を耳にかけ直す手首を誰かが握った。
驚いて目をぱちくりさせる。
「——————やっと見つけた、紬」
無造作な黒い髪がさらりと風を受ける。黒縁で牛乳瓶底の眼鏡は、折角の綺麗な顔を隠してしまっていて、やっぱり好きじゃない。
「…傑?」
「俺から離れるなって言っただろ」
そう言って私の手を引く彼の名は、蛇目 傑。
人を掻き分ける傑が私の肩を抱き寄せた。
背が大きいから鼓動の近くに私の顔がある。
誰にも当たる事なく、人混みを抜けられた。
「大丈夫か」
「うん。ありがとう…それと、ごめんね」
急に居なくなったから心配を掛けてしまったみたい。
「もう離れるなよ」
離れた手が頭の上に乗った。
優しくて大きな手。
…心地いい。
凄く安心する。
頷くと、遠くから私の名前を呼ぶ声がした。
「あっ!紬ちゃん!」
バタバタと走ってくるのは、ミルクティーベージュ色の髪をした目が隠れるぐらい長い前髪をした彼。
「もー、すっごく探したんだよ?罰としてほっぺすりすりの刑~!」
「か…翔、」
お互いのほっぺが擦れる。
…モチモチしていて全然痛くない。
でもちょっとだけ苦しい。