白鳥学園、いきものがかり
狐塚 翔、可愛い彼の名前。
私の大好きな笑顔が前髪で見えにくいのが残念。
「ねぇ、紬ちゃん。僕も同じクラスだったんだ。だから一緒に行こうね」
「…本当?」
自分の名前を見るのに必死になってて…全然気が付かなかった。でも翔と同じクラスなのは凄く嬉しい。
「嬉しい…!」
「僕も嬉しい!」
きっと今、前髪の向こうで凄く笑顔なのかな?
校内だから見れないけど、後で見れるかな。…ううん、駅に向かえば見れるよね。
翔に手を握られて、私も釣られるように翔の手を握り返した。
「おい」
「イッ!?」
翔の頭が一瞬沈んだ。真上からげん骨が降りて来たからだと思う。
屈んだ翔と同じように屈んだ。
痛そうに頭を抱える翔…凄く痛そう。
顔を上げ、視線の先に居る紺色の髪の彼に注意する。
「紘、今のは酷いよ!」
「あ゛?紬に触っからだ。俺は悪くねぇ」
髪ボサボサで牛乳瓶底眼鏡の、口の悪い彼は鰐渕 紘。
機嫌が悪いのか眉間のしわが凄い量だった。
…眼鏡のせいでもあるけど、眉間のしわも、紘の綺麗な顔を台無しにしてる。
「翔に謝っ…きゃあ!」
紘に腕を引かれ、胸の中に飛び込む。
突然過ぎて心臓がバクバクしていた。
「鰐渕、紬が吃驚してるだろ。離せ」
「紬不足だからしゃーねぇだろ」
傑…カリカリしてる。
離れようと思ったけど、強くぎゅっとされてる状態だから難しそうだった。