白鳥学園、いきものがかり
でも、どうにかして抜け出さないといけない。
何故なら——————、
……凄く周りから見られてる。
新入生の私達と先輩達から凝視されてる。でも分かる気がする。だって抱きしめられてる人がいたら見ちゃうもの。
「ひ、ひろ…見られてるから」
「見せつけとけ。俺には関係ねぇ」
私…には関係あるよ。
恥ずかしい…。
スゥっと音が聞こえてきた。
に…匂い嗅がれてる…?
「腹減る匂いだな」
嗅がれてた…。
「ちょ…朝食にりんご食べたから、かな?」
傑がお土産で買ってきてくれた美味しいりんご。
大好きな果物で、よく食べていた。
食欲がなくても、りんごなら食べられる。
…だから今朝も食べたの。
「ちげぇ…紬の匂いだ」
「…え?」
そんなはずないよ。
「薬の…匂いだと思うよ」
毎日薬を飲んでるから。
香水とか付けちゃうとむせるから付けられないし…きっとそう。
「どっちでもいい。すげーいい匂い」
そう、なの?
あまりいい匂いがするとか、感じた事なかったけど…。薬飲んでる人って結構匂うって聞いたけど…もしかして違うの?
だったら嬉しい…けど。
「喰いたくなる—————、」
ボソッと呟いた紘が口を開けた。首筋に息がかかる。