白鳥学園、いきものがかり


凪、どうしたのかな?
今日の凪、何かに焦ってるみたいで…。


「おい、何してんだ」


低い声が響く。
教室のドア付近。


さっきまで私達に向けられていた視線は、そっちに向かった。


「ひ…ひろ!おはよう!」

「…………ああ、」


眉間のシワが沢山で分厚い眼鏡姿の紘がいた。


最近ドラマとかで忙しそうだった紘。私と会う時間もだんだん少なくなって来ていて…この時間に朝の挨拶するのもなんだか久しぶりな気がする。


「良かった。学校に来れ…」


…あれ?でも今日はドラマの撮影じゃなかったっけ?

傑と紘がダブル主演するやつの。
でもどうして紘だけいるんだろう?


撮影はすぐ終わったって事、かな?
傑はその後で違う仕事があったとか?


ジッと私達を見てるかと思ったら、舌打ちをしたあとで近付いて来た。そして無理矢理凪から私を引き剥がす。


「きゃ…!?」


剥がされて行きついた先は…紘の胸の中。


ど…どうしてみんな、私に抱き着いてくるの…!?


全員からの視線が更に倍に。
ひそひそ声も倍増。



「俺がいねぇ間何してやがった」

「ええ~?何ってぇ~…」

「色々、したさ。お前がいない間に」



買い言葉に売り言葉。
これは…確実に油を注ぐ言い方。



「あ゛!?」


「───お前等何をしている?」



女生徒の黄色い声がしてから、現れた不機嫌な鷹埜先生。



「さっさと席に就け。馬鹿共が」



親指で差す時計の時間はHR開始時間で。
チャイムが鳴り響いた。

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