冷徹上司の、甘い秘密。
「……じゃあ、そろそろ話してもらおうか」
「……」
ビュッフェを楽しんだ後、私は課長に連れられてそのままホテル内にあるラウンジにいた。
適度に糖分を補給してお腹も満たされたためか、課長の機嫌はほんの少しだけ良くなったようだ。
それでも私を射抜くような視線が恐ろしい。
「……俺を避けていた理由は?」
「……え、っと……」
言葉に詰まって狼狽る私を、課長は逃してくれない。
"お前が喋るまで待ってる"とでも言いたげな視線がずっと私を捉えている。
こんなことなら避けなきゃ良かった、なんて後の祭りだ。
相田に帰り際に言われた言葉を思い出す。
"取り敢えず落ち着いて。感情的になったらダメよ"
注文したミルクティーの湯気が目立たなくなった頃、意を決して
「……私」
と口を開いた。
丁度そのタイミングで、聞こえた声。
「あれ?綾人と金山ちゃんだー!」
「……恭子?何でここに……」
どうしてこうも、タイミングが悪いのか。
レストラン側の席に座ったのがいけなかったのか、偶然なのか恭子さんと鉢合わせてしまった。
必然的に私の言葉は止まる。