冷徹上司の、甘い秘密。
「……課長」
「どうした?」
財布からお札を出して、テーブルの上に置く。
「もう、こんな風に誘うのは辞めてください」
「……金山?どうした?」
「課長のことは誰にも言いません。約束します。安心してください」
「何言ってんだよお前」
課長の声色が変わる。それが新人の頃に聞いていた声で。懐かしいのと共に、少しだけ怖かった。
「……失礼します」
「金山っ!?」
「金山ちゃん!?」
二人の焦るような声を無視してその場から走り去った。
「金山!!」
課長の叫ぶような声が後ろから聞こえてくる。その声から逃げるようにタクシーに飛び乗った。
「すぐに出てください!早く!」
私の剣幕に驚いたのか、運転手さんも取り敢えずすぐに発進してくれて。
そっと後ろを見ると、課長はそのまま茫然と立ち尽くしていた。