冷徹上司の、甘い秘密。
Sixth
*****
「チーフ、確認お願いします」
「はい。そこ置いておいてくれるかな」
「わかりました」
今日も優秀な後輩に声を掛けて、私は自分の仕事に集中する。
──あれから一ヶ月が経過した。
相田は、翌日私の顔を見ただけで何かを感じ取ったようで宣言通りギュッと抱きしめてくれた。その相田の優しさにちょっとだけ甘えた。
"何も言えなかった。何も聞けなかった。あんなに落ち着けって相田に言われていたのに、感情的になって暴走してしまった"
そう告げた私に、
"今度スイーツバイキングに一緒に行こうか"と言ってくれた相田には、もう足を向けて寝られないのではないかと馬鹿なことを思う。
あれから、業務連絡以外でまともに課長とは会話していない。もちろん食事やスイーツ巡りに誘われることも無くなった。
自分で望んだことなのに、それがなかなか辛くて。なんて自分勝手なんだと自分自身を殴り飛ばしたくなった。
でも二週間も経てば、仕事の忙しさでそんなことも言っていられなくなる。
「チーフ〜、小池君がどう教えても覚えてくれません……」
「それは白石ちゃんとは覚え方が違うだけじゃない?本人に聞いてみた?」
「聞いてないです……私絶対舐められてますよ〜」
「文句言わない。皆通る道なんだから!もうちょっと工夫してみて!」
「はぁい……」
四月に入社してきた新人さん達の指導にグループで任されている仕事。
私個人が担当していた案件を後輩達に割り振って引き継ぐ。
目まぐるしい四月後半は、残業続きで余計なことを考えずに済んだ。
いつの間にか恭子さんは営業一課には来なくなったものの、まだヘルプは続くらしい。