冷徹上司の、甘い秘密。
私はと言えば、現地解散した後は飲み足りないと感じるものの、後輩達が率先して行こうと言っている二次会にはあまり乗り気ではない。
「ごめん、今日は帰るね」
「わかりました!お疲れ様でーす!」
「お疲れ様」
白石ちゃんに別れを告げて駅まで歩こうと足を進めると、数分した頃に向こうから歩いてくる見知った人影が。
「……歩?」
もはや懐かしさすら感じるその声に顔を上げると、そこには優の姿が。
「……優」
「歩!久し振り!元気だったか?あれから連絡取れなくなって俺心配で……」
私だとわかると優は勢い良くこちらに駆け寄ってきて。街中だということを忘れているのか大声で私の手をギュッと握りしめて嬉しそうに話しかけてくる。
優の連絡先は振られた後にすぐに拒否設定をしていた。
もう思い出したくなかったから。
それなのにこんな街中で出会ってしまうとは。
こんなことなら二次会行くべきだったか。
「辞めて。目立つし私もう帰るところだから」
「そんなこと言わずに、久しぶりに会ったんだからどこか一軒寄って行かないか?酒の匂いはするけどどうせお前まだ酔ってないだろ。飲み足りないんだろ?」
私のことをよく知っているその言い方に、腹が立った。