冷徹上司の、甘い秘密。
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目が覚めた時、窓から見える空はまだ薄暗かった。
スマホはアラームを掛けていなかったため早起きして良かったと小さく安堵した。
窓の方から寝返りを打つと、隣で寝息を立てる課長の姿。
昨夜の情事を思い出して、思わず頭まで布団の中に潜る。
潜ったはいいものの、それはそれで真っ暗な布団の中で自分の膝を寄せた時に課長の体に当たり。
それがさらに私を赤面させる。
このまま二度寝してしまおうか。
「……もったいない」
顔を出して、課長の寝顔を見つめる。
どうせなら、この綺麗な寝顔をもうちょっと拝んでいたい。
"好きな奴にキスして何が悪い"
"好きだ"
"……歩"
昨夜の課長の言葉を思い出して、嬉しさと恥ずかしさとで胸がいっぱいになる。
それ以上に、愛おしさでいっぱいだった。
"私も、好きです"
欲に満ちた目をした課長に、私も何度そう伝えたかわからない。
同じ気持ちだった。それだけで幸せで。
今すぐこの嬉しさを叫びたいとすら思うものの、そういうわけにもいかない。
しばらく課長の寝顔を見つめることにした。
長い睫毛は緩やかなカーブを描いていて、頬には毛穴一つない。凛々しい眉にうっすらと空いた唇。
この薄い唇が、昨夜何度も私に愛を囁いて、何度も私にキスをしたんだよね……。
わかりきったことを思ってまた赤面した。
カシャ、とその寝顔をスマホで撮影すると一瞬眉を潜めたものの、バレていないことにホッと一息ついた。
そんな調子で見つめているうちに段々ウトウトとしてきて。
タイミング良く課長が少し動いて引き締まった筋肉が顕になり。
無意識のうちにその腕に引き寄せられるようにすり寄る。
「……かちょー、……好き」
そう呟いたことすら気が付かぬまま抱き付き、再び寝息が聞こえ始めた頃。
シャッター音で課長は起きていて偶然聞いてしまったことなど私は知る由もなく。
耳まで真っ赤に染めながらも触れるだけのキスを落としていたなんて、全く気が付かなかった。