冷徹上司の、甘い秘密。



 窓から差し込む日差しで目が覚めた時、隣には既に誰もいなくて。



「……あれ?……」



 眠い目を擦り、ベッドから降りて床に落ちていた下着と服を着る。


 そのまま寝室を出てそっとリビングに向かうと、お味噌汁の良い香りがした。



「……おはよう」



 私の姿を見てふわりと笑った課長。



「お、おはようございます……」



 と返す。


 その甘い笑顔に胸焼けしてしまいそう。



「味噌汁、飲む?」


「いただきます」



 ソファに促され座っていると目の前に置かれたお味噌汁。



「あ、しじみだ」


「嫌いか?」


「いえ、好きです。ありがとうございます」



 きっと、昨夜お酒を飲んだからしじみのお味噌汁にしてくれたのだろう。優しさとしじみの出汁が身に染みる。


 スウェット姿で私の隣にぴったりと座った課長は、ソファの背もたれに身を預けてテレビを見ていて。


 お昼のニュースが流れているのを見て、



「……え!?もうお昼ですか!?」



 と驚きの余り大きな声が出た。



「何を今更。もう昼過ぎだけど」


「そんなあ……せっかくのお休みだったのに寝過ぎた……」



 落ち込む私に、課長は笑う。


 飲み終わったお碗をシンクで水に浸す。



「食器洗っちゃって良いですか?」


「いや、そのまま置いといて」


「でも……」


「いいから」



 袖を捲っていた私の腕を掴み、そのまま引かれた。


 その拍子に体ごと課長の胸の中に飛び込んでしまう。

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