冷徹上司の、甘い秘密。


 仕事が終わった17時半。


 私は白石ちゃんに捕まる前に急いで会社を飛び出して、とある場所に向かっていた。


 今日はずっと楽しみにしていた、期間限定のケーキバイキングが開催される日だった。


 事前になんとか予約をゲット。


 日付指定されていたため死ぬ気で仕事を終わらせてきた。


 ホテルの一階。レストランでスマホでデジタルチケットを提示して案内された会場。席は自由席。端の二人席にジャケットを置き、早速ケーキの元へ。


 今回は九十分間食べ放題。メインはいちごスイーツとチョコレート。いつもよりランチを少なめにしてお腹は空かせてきた。コンディションはバッチリだ。


 キラキラと輝く宝石のようなスイーツの数々に、私の目は輝く。


 お皿を持って気になるケーキをたくさん取って、一人で席で頬張る瞬間が、とても幸せだ。


 昔から甘いものが好きで、学生時代はよく友達とスイーツバイキングに行っていた。


 しかし社会人になってからは予定が合わなかったりと中々行けなくて。


 相田もケーキにはあまり興味が無いので一緒に行ってくれないことが多い。


 優に至ってはそもそも甘い物が苦手だから行きたがらない。


 最初は一人で行くのもなあ、と躊躇していた。


 現に今も周りはカップルや友達同士で来ている人が殆どだが、ある時


 "結局食べる時は集中しているのだから一人でも変わらないのではないか?"


 と思い、それからは特に気になることもなく一人で堂々と食べに行っている。


 むしろ自分のペースで食べることに集中できるから、一人の方が気が楽だったりもする。


 気が付かなかっただけで意外とお一人様が多いのもその理由だ。

< 12 / 186 >

この作品をシェア

pagetop