冷徹上司の、甘い秘密。
今日も私の他にもお一人様が何人かいるようだ。
私はテンポ良く小さなケーキを食べ進め、無くなるたびに新しいケーキを取りに行った。
今日何度目かのイチゴタルトのコーナーへ。さっぱりしたいちごと甘いソースとサクサクのタルト生地がとても美味しい。一口サイズだから何個でもいける気がする。
「お、最後の一個だ」
補充される前の最後の一個を取ろうとトングに手を伸ばすと、同じように伸びてきた手が当たって、反射的に手を引っ込めた。
「あっ……すみませんっ」
「いえ、こちらこそ……」
聞いたことがあるような低い声に、ふと顔を上げる。
すると。
見慣れたアーモンド型の奥二重が、滅多に見ないメガネの奥から驚いたように私を見つめていた。
「……えっ!?」
「……金山っ!?」
「ひ、飛成課長!?何やってるんですかこんなところで」
突然のことに驚いて思わず声が大きくなったことに慌てた課長が、私の口元を手で押さえて端の方に身体ごと追いやられる。
あまりに突然のことでケーキを乗せたお皿のトレイはイチゴタルトのコーナーへ置きっぱなし。
そんなことも気にならないくらい、驚いて固まった。
やっと手を離されたと思ったら、課長は焦ったように周りを見回す。