冷徹上司の、甘い秘密。
「どうしてここに?飛成との会議はお昼前には終わったと伺っていますが……」
「はい、会議を終えてホテルで仕事してから金山さんに会いたくてまた来てしまいました」
「……え」
「本当は会議が終わった後にお昼に誘おうと思っていたのですが、外回りに行ってしまったと伺ったので」
「あぁ、そうですね……」
「なのでご迷惑は承知で待たせていただいていました」
「はぁ……」
突っ込みどころが多すぎて逆に言葉に詰まる。
そんな私にチャンスを感じたのか、
「この後お時間ありますか?実は僕、明日の午前の便で東京に帰ってしまうので今日しか時間が無くて。もし少しでもお時間あればお食事でもと思ったんですけど……」
「えぇっと……」
「忙しければ、せめて連絡先の交換だけでもしていただけませんか?……どうしても、このまま別れるのは嫌でして……」
そんなストレートなアプローチを受けた経験があまり無い私はどう断ったらいいのかわからなくて戸惑う。
「だ、ダメですか……?」
そう言って目尻を下げて切な気な顔をする堀井さんに、どう断れば傷付けずに済むのかを必死で頭の中で考えていた時。
グイッといきなり腕を引かれ、身体が後ろに傾く。
それを難なく受け止めた大きな身体に優しく抱き締められた。