冷徹上司の、甘い秘密。
「え、課長?」
「お前もう黙れ」
「え?え!?」
「ははっ!……はぁー……適いそうもないなー……。金山さん、驚かせてしまってすみませんでした。今回は帰ります。
でも今度もしお会いする機会があったら、……容赦しないのでそのおつもりで」
姿はよく見えないけれど、最後の言葉は課長に向けて言ったようだった。
「金山さん、俺のこと、考えてみてくださいね!今度は連絡先交換させてくださいねー!」
「えっ!?」
「それでは、失礼します」
よくわからないまま、堀井さんはそう言って帰って行ったようだ。
そして綾人さんはしばらくそのまま立っていたものの、私の手を引いて会社の裏に向かう。
時刻は既に夜。街灯の無い自社ビルの裏は、真っ暗で。周りから死角になる建物の窪みに連れて行かれた。
「……綾人さん?」
「本当お前……心臓に悪い」
「え?」
私の存在を確かめるようにギュッと抱きしめる綾人さん。
はぁ、と溜め息を吐きながらも離してくれる様子は無い。
「……すみません。私、ああいうの断るのが凄く苦手で……」
綾人さんの背中に腕を回す。
すると私を抱きしめる腕の力が強くなった。
「私、変な顔してました?」
堀井さんに言われたことを思い出して聞いてみる。
すると
「……襲いたくなる顔してた」
と衝撃的なことを言われた。