冷徹上司の、甘い秘密。
Eighth
「……お、お邪魔します」
「ん、上がって。適当にくつろいどいて」
「あ、はい」
タクシーが綾人さんの家に着いた時には、時刻は既に二十時を回っていた。
リビングのソファーに座り、鞄からタッパーを取り出す。
「あ、あの。これ作ってきたんです。良かったら食べませんか?」
「……?」
部屋着に着替えてきた綾人さんはタッパーを見て驚いたように目を丸くした。
「歩が作ったのか?」
「はい。綾人さんのお口に合うかはわかりませんが……」
「ありがとう。何作ろうか悩んでたところだったんだ。助かったよ」
そう言って触れるだけのキスをした綾人さんは、私からタッパーを受け取るとそのままキッチンに向かう。
私もそれを追いかけて
「私やりますよ」
言うものの、綾人さんはそれを許可してくれない。
「いいから、座ってろって。疲れてるだろ?」
「それを言うなら綾人さんの方が残業してたじゃないですか」
「俺はいいから。温めて皿に盛るだけなら問題無い」
「……ありがとうございます」
不服だが、譲るつもりが一切ないのが見て取れるため身を引いた。
結局綾人さんの手を煩わせているのでは?と情けない気持ちになりながりも、どこか嬉しそうな綾人さんの顔を見たら私も思わず顔が綻ぶ。