冷徹上司の、甘い秘密。
相手が綾人さんだということは堀井さんには一言も言っていないけれど、それでも嬉しかったと、綾人さんは微笑んでくれた。
「本当は宣言できれば一番いいんだけどな」
「……でも、異動しなきゃいけないんですもんね」
「あぁ」
できれば一緒に働きたい。
一番近くで、綾人さんが生き生きと仕事をしているところを見たい。
そんな邪念はあるけれど、それ以上に営業という仕事が好きで、誇りを持っている。まだまだやりたいこともあるから、異動はしたくないというのが本音だ。
「でも多分、堀井さんにはバレたな」
「えっ!?」
「俺も焦って大分わかりやすいことしちゃったからな……」
でも確かにそうかもしれない。堀井さんにバラされたらどうしよう。
……と思ったけど、もう東京帰るんだったっけ。……良かった。
「……そう言えば、綾人さんは何であの場に来たんですか?」
偶然にしては出来過ぎなタイミングだし、急いで来たように見えた。