冷徹上司の、甘い秘密。



「……課長?」


「お前は本当……はぁ」


「えぇ……?」



 何故呆れられているのかよくわからない。この数分で課長の見たことのない表情をたくさん見た気がする。


 しかし私はここでのんびり会話をしている時間など無くて。この残り三十分を一秒足りとも無駄にしたくはない。



「大丈夫ですよ。課長に甘い物好きな彼女さんがいるって事は会社の皆には黙っておきますから!じゃあ!私はまだ食べないといけないので!」



 失礼します!と勢いよく頭を下げてイチゴタルトコーナーへ戻る。幸いなことにトレイもそのまま置いてあり、イチゴタルトも補充されていた。



「ラッキー!」



 どうせ一個取ってもすぐに食べてしまうから、と贅沢に三個も取り、他のケーキも取ってまた席に戻る。


 それを口いっぱいに頬張りながら幸せな気持ちで飲み込んでいると、私の向かいに人影が落ちて。



「ん……あれ、かちょー?どうかしました?」



 飛成課長が何も言わずに腰掛けた。


 そしてその手には、同じようにイチゴタルトがたくさん乗ったトレイが。



「……」


「……」


「……」



 何故そこにいるのか。わからない。


 しかし私の問いに答えることもなく向かいに座っただけで、何も言わない課長。


 どこかそわそわした様子に、私も戸惑う。

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