冷徹上司の、甘い秘密。
「……えーっと。……彼女さんは?」
「……そんなものはかれこれ何年もいない」
「……ではご友人と一緒に?」
「……違う」
「……」
え?どういうこと?
彼女でもない、友達でもない。……親?兄妹?いやいや、そんなタイプには見えないし。
頭の中で憶測がぐるぐると回る。
そんな私の脳内を見ているかのように、課長はもう一つため息をこぼした。
「……俺一人で来た」
「……課長一人で?……えぇっと……?」
理解が追いつかなくて、課長を見ながら大事に食べていたケーキにグッサリとフォークを刺してしまう。
そんな私の手元を見た課長は、私からフォークを奪って粉々に砕けたタルトを生クリームで掬う。
そしてそのフォークを私の口元に持ってきて。
「……ほら、もったいない。食え」
甘い香りに条件反射で口を開けるとクリームに付いた砕けたタルト生地が舌の上に乗って。
食べさせて貰ったことに気が付いて急に恥ずかしくなったものの、その安定的な美味しさに思わず目尻が下がった。
ゆっくりと味わって飲み込むと、ぎこちなく課長に視線を戻す。