冷徹上司の、甘い秘密。



「でもそんな時に恭子と付き合って、最初は恭子にも隠してたんだけど、いつだかチョコ摘んでるところ見られたことがあって。その時に初めて言った。引かれる覚悟も捨てられる覚悟も出来てた。
でも恭子は気にしなくていいって言ってくれたんだ。それで凄い気が楽になった。……けど結局恭子とも長くは続かなかった」


「……」


「歩にも言うつもりなんてなかった。俺は人が離れていくのが怖いから、誰に対しても自分で壁を作ってたんだ。だから歩とあの会場で会った時、また引かれる覚悟は出来てた。
だから俺が甘党だって知って"嬉しい"って言ってくれた時に、ホッとしたんだ。肩の荷が降りた感じで。歩は離れて行かないってわかったからだと思う」



 数ヶ月前の自分の言動を思い出す。



 "課長がスイーツ好きならいっぱい話せそうで今結構嬉しいです"



「あの時、私本当に嬉しかったんです。相田誘っても、いっつもうざったそうにされてたから」


「ははっ、確かに相田っぽいな。……でも俺は歩の言葉に救われたよ」



 だから感謝してる。ありがとう。


 そう言われて、私の口角も自然と上がった。



「会社の奴らが信用できないわけじゃない。むしろ凄く信頼してる。でもプライベートな部分は歩が知ってくれていればそれでいい。だからこれからも特別誰にも言うつもりはない」



 そうは言いつつも、自分からは公言しないだけできっと聞かれたら言うのだろう。


 綾人さんは、そういう人だ。

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