冷徹上司の、甘い秘密。
「歩は?いつから俺のこと……?」
仕返しだ、とばかりに嬉しそうに聞いてきた綾人さんに、私も伝えようと記憶を掘り起こす。
「……結構最近ですよ。でも入社して初めて会った時から、かっこいい人だなって思っていました。
ただ私、社内の人と付き合うと別れた後色々と面倒臭そうでずっと避けてきたんですよ」
「……確かに、"金山さんに話しかけたら事務的対応しかしてもらえなかった"って嘆いてる社員がいたな」
「……それは初耳ですね」
誰に対しても似たような感じしかしてこなかったからだろう。
「だから綾人さんと会場で会った時も、純粋に嬉しかったんです。まぁ、スイーツ仲間ができた、くらいの軽いものでしたけど」
「だろうな」
「ちゃんと自覚したのは、恭子さんと会ってからですね」
「恭子と?」
あの時の気持ちを話すと、納得したように綾人さんは頷いた。
「あの時に気が付いて、その後相田に駄目押しくらって。ようやくはっきりと自覚した感じです」
「……相田には色々と世話になったみたいだな」
「はい。相田には昔から助けてもらってばっかりで。もう足向けて寝られません」
「ははっ、そうか。じゃあ俺も相田にお礼言っておかないとな」
「相田、ニヤニヤしながらからかってきますから気を付けてくださいね」
「……肝に銘じておく」
相田には、本当に感謝している。
揶揄ってきてうざったい時もあるけれど、それもまた楽しい日々だ。