冷徹上司の、甘い秘密。
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季節は巡り、優しい風が吹く季節、秋。
チャペルの鐘が鳴った。
「相田……綺麗……」
「あぁ、そうだな」
今日は相田の挙式と披露宴の日。
快晴の空は、相田と旦那さんの結婚を祝福するように澄み渡っている。
バージンロードを一歩一歩進む相田が身に纏うのは、プリンセスラインのふわりとした真っ白なウエディングドレス。
"本当はマーメイドドレスの方が似合うのはわかってるんだけどさ、一生に一度くらいはザ!花嫁!みたいなウェディングドレス着たいじゃん?"
先程新婦控え室でそう笑っていた相田の笑顔を思い出す。
「今日からもう、相田じゃないのか……ずっと相田って呼んでたからなんだか変な感じ」
相田は今日披露宴の後に区役所に行き、婚姻届を提出すると言っていた。
今度からは眞宏って呼ばないと。……なんかいきなり下の名前で呼ぶのって、ムズムズするな。
"ママ"から"お母さん"に変わった時みたいな、そんな気恥ずかしい感じ。
「新郎、保。あなたはここにいる新婦、眞宏を健やかなる時も病める時も妻として愛し、敬い、いつくしむことを誓いますか?」
「誓います」
「新婦、眞宏。あなたはここにいる新郎、保を健やかなる時も病める時も夫として愛し、敬い、いつくしむことを誓いますか?」
「……はい。誓います」
凛とした声が響く。
幻想的な空間の中での二人の幸せそうな誓いのキスに、ほぅ……と息が漏れた。