冷徹上司の、甘い秘密。



*****


 季節は巡り、優しい風が吹く季節、秋。


 チャペルの鐘が鳴った。



「相田……綺麗……」


「あぁ、そうだな」



 今日は相田の挙式と披露宴の日。


 快晴の空は、相田と旦那さんの結婚を祝福するように澄み渡っている。


 バージンロードを一歩一歩進む相田が身に纏うのは、プリンセスラインのふわりとした真っ白なウエディングドレス。


"本当はマーメイドドレスの方が似合うのはわかってるんだけどさ、一生に一度くらいはザ!花嫁!みたいなウェディングドレス着たいじゃん?"


 先程新婦控え室でそう笑っていた相田の笑顔を思い出す。



「今日からもう、相田じゃないのか……ずっと相田って呼んでたからなんだか変な感じ」



 相田は今日披露宴の後に区役所に行き、婚姻届を提出すると言っていた。


 今度からは眞宏って呼ばないと。……なんかいきなり下の名前で呼ぶのって、ムズムズするな。


 "ママ"から"お母さん"に変わった時みたいな、そんな気恥ずかしい感じ。



「新郎、保。あなたはここにいる新婦、眞宏を健やかなる時も病める時も妻として愛し、敬い、いつくしむことを誓いますか?」


「誓います」


「新婦、眞宏。あなたはここにいる新郎、保を健やかなる時も病める時も夫として愛し、敬い、いつくしむことを誓いますか?」


「……はい。誓います」



 凛とした声が響く。


 幻想的な空間の中での二人の幸せそうな誓いのキスに、ほぅ……と息が漏れた。

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