冷徹上司の、甘い秘密。



 挙式の後は、会場をホテルに移して披露宴が始まる。


 相田……じゃなくて眞宏の好意で、綾人さんの隣に私の名前があった。


 控え室で眞宏にウィンクされたのは、これだったようだ。


 つつがなく進行されていく披露宴。


 余興に笑い、友人代表スピーチでほろりと感動し。


 サプライズで新郎新婦の共通の友人からのムービーにはもらい泣きしてしまった。


 両親への感謝の手紙では、もはや親族並みに号泣してしまった。



「……お前、泣きすぎ」


「だ、だって……感動してっ……」


「お前友達枠じゃないからな?ここ会社関係者席だからな?」


「そういうことは言わないでくださいっ……感受性豊かなだけですっ」



 綾人さんも呆れるくらいの号泣っぷりに、よく知っている営業一課の社員達からも笑われる。


 お色直しで着替えたマーメイドタイプのドレス姿が似合いすぎて、私が眞宏に惚れそうになったりもした。


 その度に綾人さんが何とも言えない表情で見つめてきていた。ヤバい奴を見るような目はやめていただきたい。


 そして披露宴も佳境を迎え、ブーケプルズが行われる。


 ……と思ったら。


 そのまま披露宴は終わりを迎えて写真撮影の時間になった。



「金山!」



 私の姿が目に入った瞬間、嬉しそうに私を呼ぶ。



「かーなーやーま!」



 と返事をしない私に再度声をかけてきて。



「おめでとう」


「ありがとう」


「今度から、眞宏って呼ばないとなあって考えてた」



 いつ慣れるかはわからないけども。



「えー?金山はいいよ、相田のままで」


「いやよくないでしょ」



 旦那さん的には良い気分じゃないでしょ。そう思って横に座る保さんに視線を向けると、



「いいんじゃない?俺は気にしないよ」


「ほら」



 ……似た者夫婦のようだ。

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