冷徹上司の、甘い秘密。
「課長、宮本コーポレーションの津堂様から一番にお電話です」
「……ありがとう金山」
──私、金山 歩は、そんな飛成課長がいる営業一課に所属している。
新卒入社してから七年が経過した二十八歳。一課の中でも幾つかのグループに分かれて仕事をしており、その内の一つのチーフを任せてもらっている。
そしてその全てのグループを統括しているのが飛成課長だ。しかも課長に就任する前は私のグループのチーフをしていた。入社後すぐに飛成課長のグループに配属された私はそれ以来いつも厳しく指導してもらっている、直属の上司だ。
季節は冬の終わり、三月。
「金山ー、ランチ行こう」
パソコンに向かっている時に掛けられた声に、時計を見上げる。
いつの間にお昼休みになったのか、全然気付かなかった。
言われてみれば、なんだかお腹が空いてきたような気がする。
「相田、今日取引先と会議の予定だったんじゃなかったの?」
「それが延期になっちゃって。だからランチ行こ」
「わかった」
別グループのチーフをしている同じ営業一課の同期、相田 眞宏。字面だけ見るとよく男性に間違えられるものの、歴とした女性である。
サラサラの黒髪ストレートが取引先の男性社員からの評判も良く、部下からの評判も良く営業成績も良い。