冷徹上司の、甘い秘密。
それでもポロポロと零れ落ちてくる雫に、私の手が追いつかなくなって。
──ふと、課長が掴んだ私の腕をそっと引く。
「え?」
ポフ、と目の前の大きな身体に吸い込まれるように受け止められた。
頭の後ろに回った手は見た目よりも大きくて、温かい。
抱き締められている。そう気付いたのは、少し経ってから。
頬に当たる課長の髪の毛が擽ったい。
驚いて、「……飛成課長?」と呟くとそっと体を離して。
鼓動が高鳴る。
「……止まったか?」
そう言って私の顔をまた覗き込む。
言われて初めて、あんなに止まる気配の無かった涙がピタッと止まった事に気が付いた。
「……あ」
「止まったみたいだな」
「……はい。すみません。ご迷惑をおかけしました」
帰ります。そう言おうとしたものの、飛成課長は再び私の腕を掴んだまま歩き出して。
「か、課長?私もう大丈夫ですからっ……」
「いいから黙って」
「……」
黙れと言われてしまうと黙るしかなくて、なるようになる、と課長に大人しくついていく。