冷徹上司の、甘い秘密。



「相田には言ってなかったんだけどさ」


「うん、何々?」


「実は、……結構前にプロポーズされた」



 恥ずかしくて、語尾が段々とか細くなった。


 まだ両親にも言っていない。初めて誰かに報告した。


 しかし相田は何も言わない。


 もしかしたら聞こえなかったかも。そう思ったものの、それはどうやら杞憂だったようで。



「え!?えぇ!?聞いてないんだけど!」



 たっぷりと数秒置いてから、鼻息荒く目を見開いてこちらに身を乗り出してきた。



「え!?ちょっと待って!?結構前って何!?私聞いてない!」


「相田!うるさいよ!落ち着いて!」



 声を荒げる相田を慌てて嗜めて、周りのお客さんに謝罪の意味を込めて会釈をする。


 ひとまず相田を連れてお会計をし、お店を出た。



「ちょっと!今日の夜飲みに行くわよ!」



 興奮冷めやらない相田は、私の腕を掴んで離してくれない。



「えぇ……?急だなあ」


「いいの!根掘り葉掘り聞くから覚悟してなさい!」


「マジか……」



 どうやら逃げる術は無い模様。


 これは、今日の夜は長くなりそうだ。

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