冷徹上司の、甘い秘密。



「か……綾人さん?」


「あ、いや……何でもない」



 その表情が、なんだか少し寂しそうに見えた。



「……綾人さん、まだお時間大丈夫ですか?」


「……え?」


「私のおすすめの居酒屋があるんです。そこのカタラーナが結構美味しいんですよ。良かったら晩ご飯ついでに食べに行きません?」



 私の誘いに顔を上げた課長。



「……行く」



 一言ボソッと呟くと、私の手を取って歩き出す。


 けれどそっちはそのお店とは逆方向で。



「ふふっ、綾人さん、そっちじゃないです。向こうです」


「……」


「ははっ、行きましょう」



 逆に私が課長の手を取って反対側に引っ張って足を進めた。

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