冷徹上司の、甘い秘密。
私おすすめの居酒屋は、街中の少し外れた路地裏にある、小さなお店。
元々は焼肉が売りのお店だったものの、サイドメニューやデザートの人気が出たために今では普通の居酒屋の括りになっている。
「お、姉ちゃん久しぶりだなあ!」
「ご無沙汰してます。最近忙しくて来れなかったので久しぶりに来れて嬉しいです」
「俺も嬉しいよ。姉ちゃんは前からの常連だからな」
数年前から定期的に来店しているためもうお互い顔馴染み。
自己紹介したわけではないから私の名前は知らず、昔から姉ちゃんと呼ばれている。
一人っ子の私としてはなんだかむず痒い気持ち。
課長の向かいに腰掛けて、今回は私が適当に注文する。
「ここの桜ユッケが美味しいんですよ」
「馬肉か?」
「そうなんです。元々ここ焼肉屋で、お肉は格別に美味しいんです」
「へぇ」
「でもここのご主人は頼めば何でも作ってくれるのでサイドメニューの数が尋常じゃないんですよね」
「……確かに、壁一面がメニュー表になってる感じだな」
「昔から来てる私でも知らないメニューがよく増えてるんです」
人の良いご主人は裏メニューのように頼まれれば何でも作ってくれるのでどんどんメニューが増える。その度に壁に手書きのお品書きが増えていくため、毎回それを確認するのも密かな楽しみだったりする。