冷徹上司の、甘い秘密。



「でもまさか姉ちゃんが彼氏連れてくるとはなあ」


「えっ!?いやっ、彼氏とかそういうのじゃないんでっ」



 どういう勘違いをしてそんな結論に至ったのか、ご主人はニヤニヤしながら私達を見比べてきて。



「そんな真っ赤な顔で言われると意味深だなあ?」


「だから違うんですって!」



 慌てて手を横に振ると、さらに面白そうに私達を眺めて。



「兄ちゃんも沢山食べてってくれよ!美味い肉とメシ作るからな!」


「あ、ありがとうございます……」



 豪快に笑って厨房に戻って行った。



「……なんかすみません」


「いや……」



 何とも言えない気まずいような、気恥ずかしいような。


 ご主人の宣言通り、出てくる料理は安定的にどれも美味しい。


 運ばれてきたお肉を焼きながら、頼んだ桜ユッケを二人でシェアしたりサラダを食べたり。


 冷麺も美味しいからと色々注文していたら食べ過ぎてしまった。



「く、苦しい……」


「でもそろそろカタラーナ来るぞ」


「うぅ……それは食べます」


「別腹か」


「はい」



 美味しいご飯の後の甘いデザートは幾つになっても幸せを感じられる。


 それに今日はこのカタラーナを食べにここに来たのだ。



「姉ちゃん、兄ちゃん、お待たせ」


「ありがとうございます」



 運ばれてきた私おすすめのカタラーナは、こっくりとした密度としつこくない甘さがとても美味しい。


 前からここのカタラーナが大好きで、私が知っている中では上位に入る美味しさ。



「うん、美味い」


「ですよねっ、甘すぎなくて美味しいですよねっ」



 自分の好きな物を褒めてもらえると、嬉しいものだと知った。

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