冷徹上司の、甘い秘密。
「【R.foods】様、ツインルーム一部屋のご予約いただいておりますね」
「……え?」
「……は?」
「……?」
「え、二部屋ですよね?」
聞き間違いかと思ってそう尋ねるものの、
「……いえ、一部屋のご予約となっておりますが」
フロントの方の引き攣った表情が全てを物語っていて。
課長は焦ったようにどこかに電話をかけ始めた。
それは会社宛てで、
「ホテルの手配したのは誰方ですか!?」
詰め寄った数分後。
「……会社側の手配ミスだ……」
ホテルを手配してくれた社員が他の出張予定の社員が泊まるホテルと逆の数で予約してしまったよう。
その社員は電話の向こうで平謝りだったらしい。
「わかりました。どうにかするので大丈夫です」
そう言って電話を切った課長。
「すみません、もう一部屋空いていますか?離れててもいいので」
そう聞くものの。
「申し訳ございません。生憎本日はアーティストのコンサートが近くであるため既にこちらのお部屋以外全て予約で満室でして……」
「……」
「……」
そりゃそうだろう。
腕時計に視線をやると、時刻は既に21時を回っていて。
今から他のホテルを探したところで都心のビジネスホテルでこの時間に空きがあるところなんてあるのだろうか。