冷徹上司の、甘い秘密。



 そんな人数合わせ同士の私達は、盛り上がる周りとは一枚壁を隔てたような、不思議な距離感があった。


 私は特に会話に参加する事もなく黙々と食事をして時間をやり過ごし、参加していた男性陣に対しても全く興味がなかった為自分をよく見せようともせず。


 しかし何故かそれが優の目に止まったらしく、連絡先の交換を頼まれたのがきっかけで仲良くなった。


 最初は全くそんなつもりも無かった私だが、優しくて爽やかで話を聞くと他業種の営業としてバリバリ働いているらしく、私の方が二歳年上だけど別に気にするようなことでもないし、普通に話も合う。


 数回デートを重ねて告白され、付き合うことになった。


 それから大きな喧嘩も無く付き合うこと早三年。


 "話がある"と言われ、仕事終わりに待ち合わせ場所に向かうと車に乗せられ、いつだか雑誌に載っているのを一緒に見た夜景の見えるフレンチレストランへエスコートされて。


 穏やかに食事が終わった頃、緊張した面持ちの優から指輪を渡されて"結婚してください"とプロポーズされた。


 輝くダイヤモンドの指輪。誰もが知る高級ブランドのそれは、私の人生では一生縁がないと思っていたもので。


 人生で初めてのプロポーズとその見るからに高級な指輪にまず驚いて、



"え、あ、はい。私で良ければ。よろしくお願いします"



 とびっくり顔のままか細い声で受け入れたのだった。

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