冷徹上司の、甘い秘密。
「……どうぞ」
「……ありがとう」
もはや癖となってしまっているこの行動に、課長も困ったような顔をして。
「……お前は気が利きすぎる」
「……私貶されてます?」
「いや、褒めてる」
会社じゃないんだからそこまで気を遣うなということだろうか。
何となく、課長が目の前で仕事をしていると何かしないとムズムズするんだ。許してほしい。
自分の分のミネラルウォーターをコップ半分まで注ぎ、一気に飲む。
「そんな一気飲みしたら身体に悪いぞ」
「ふぅ……わかってはいるんですけどやめられなくて」
お風呂上がりは思いっきり冷えたお水を一気に胃に流し込みたい。
昔から両親にもやめた方がいいと言われているものの、この身体中に水分が染み渡っていく感覚が病みつきになってしまって未だにやめることができなかった。
「疲れただろ。今日はゆっくり休め」
「でも課長は」
「俺はもう少し明日の準備してから寝るから」
「それなら私もやりますよ」
「いいから。お前は明日に備えて今日は寝ておけ」
「でも……」
「いいから寝る!」
「……はーい」
言われた通りにベッドの中に潜り込む。
ピシッとベッドメイクされた布団の中に入るのが地味に好きだったりする。
布団の中から顔だけ出して、課長の方を見つめるものの、課長はパソコンの画面に夢中で。
……って、こんな状況で寝れるか!っての。
早く脈打つ心臓を手で抑えながら、ギュッと目を瞑ってどうにか寝ようと試みるものの中々睡魔は来ない。