冷徹上司の、甘い秘密。
課長が起きるのが遅かったせいで遅刻しそうになったものの、なんとか間に合った私達。
アポを終えて二人で約束していた有名なケーキ屋さんを訪れた。
季節のフルーツがふんだんに使われたキラキラしたタルトを目の前に、向かい合って席に腰掛けそれぞれフォークを刺した。
「お、おいしい……!」
甘過ぎず淡白すぎないフルーツタルトに舌鼓を打ち、折角だからと他のケーキも食べて会社へのお土産に焼き菓子を選ぶ。
「美味しかったし丁度良いお土産買えたし、良かったですね!」
「そうだな」
話しながら二人で電車を乗り継ぎ、空港へ向かう。
着いてチェックインを済ませていると、
「……あれ?綾人?」
後ろから課長を呼ぶ声がして振り向いた。
そこには背の高い、すらっとしたスレンダーな美人さんがいた。
長い手足は凄く細く、ピシッとしたパンツスーツにピンヒールのパンプス、染めた事がなさそうなサラサラのロングヘアが仕事の出来る女という感じ。
出張帰りなのだろうか、これから出張に出向くのか。私達よりも大きなスーツケースを引いた女性だった。
誰だろう?知らない人だな。そう思っていると課長は
「……恭子?」
と、その方の名前を呼んだ。
それがどうしてか、少しだけ。ほんの少しだけモヤモヤした自分がいた。