冷徹上司の、甘い秘密。
「久し振りじゃない。どうしたの?出張?」
「あぁ。今から帰るところだ」
「なんだ、言ってくれれば美味しいご飯屋さんくらい教えたのに」
「いいよ別に」
恭子さん、と呼ばれた女性を見るなり目を見開いて驚いた表情をした課長。
どうやら昔からの知り合いのようで。
私は一歩後ろに下がる。
そこで初めて私に気が付いたらしい恭子さんは、私にも話しかけてきた。
「あら、綾人の同僚の方かしら?初めまして。坂本 恭子と申します」
「あ、金山 歩と申します」
流れで名刺交換をした私は、恭子さんがうちの会社の東京本社で働いている先輩だということも知った。
「今はこっちで働いてるけど、昔は私も北海道支社で働いてたのよ?」
そしてそんな衝撃の事実教えられた私は驚いて口があんぐりと開く。
「綾人とは同期なのよ」
「へぇ……」
「お前は相変わらずうるさいな」
「何よ、良いじゃない。久し振りに会ったんだから」
ねぇ?とこちらに振られて、反射的に愛想笑いを一つ。
「金山、コイツのことは無視して良いから」
「酷い!金山ちゃん、綾人から嫌がらせとかされてない?大丈夫?」
「勝手に馴れ馴れしくするな」
「あら、焼きもち?」
「ちがっ……そんなんじゃないから」
「ふふっ……恥ずかしがっちゃって」
会話を聞いただけで、二人が気心知れた仲だというのがよくわかる。
普段見ないような課長の雰囲気とフレンドリーな恭子さんからの圧に、笑うことしかできない。