冷徹上司の、甘い秘密。
「……少しは休憩しろ」
ふわりと漂うココアの甘い香り。
「あ、ありがとうございます」
置かれたカップから湯気が広がっていた。
見上げるとそこには課長の姿。私のものと同じものを持っているのだろう。そこからも甘い香りがした。
腕時計で時間を確認すると後30分程休憩時間は残っていた。
……私もちょっと休憩しよう。
折角用意してくれたココアを温かいうちに飲みたい。
ただ会社で課長と二人きり、というのが思いの外緊張してしまって落ち着かない。
ドキドキと高鳴る胸。それに比例するかのように熱を帯びていく頰。
このまま無言の空間じゃ私が恥ずかしさでおかしくなってしまいそうだった為、話題を振る。
「課長、お昼は食べたんですか?」
ココアを飲みながら頷いた課長に、私も一口カップを傾ける。
「……おいしい」
口の中に広がる甘さに思わず顔が綻ぶ。
「ココアなんて給湯室にありましたっけ?」
ふとそう思って聞くと、課長はいつもの真顔でこちらを向いて。
「家から持ってきた」
と平然と言ってのける。