何か、どこか、ひとつ
「俺は桐谷龍、歳は23、桐谷組若頭だ」
ん?組?若頭?
「あ、そーゆー感じなんですか」
なんとなくは感じていたものの、
改めて言われると変な感じがした
「一応、極道で生まれ育った」
「お前のことを知ったのも組絡みだ」
え?私のこと、なんか噂になってるの?
「自己紹介した方がいいですかね?」
「中野ゆり、20歳、施設で育ちました」
「知ってる」
あ、そうか
「ゆりのことはだいぶ前から知っていた」
突然ゆりと呼ばれ少しドキドキする
「ゆりに薬を渡した奴が別の組のやつで
その組は一般人にも危害を加えたり
薬から拳銃、なんでもやる」
「そこの下っ端が売人だという情報が入って
被害者を調べていたらゆりをみつけた」
被害者は私だけじゃないだろう
それなのにどうして
「その時に俺の管理する家の住人だと知った」
え?管理してるって、、
「だから俺は被害者の中から1番近くで
助けてやれる、ゆりを見守っていた」
「まあ、見守っていたっていうのは
こっちの都合だな」
「簡単に言うとお前のストーカーだな」
は?ストーカー?
やばい人にストーカーされてたのか
「ゆりは外出する時、何度か俺の車みただろ」
「あれはいつも見てたからだ」
こわ。
「でも、ゆりを今すぐ助けようと思ったのは
あの朝方の日だ」
あ、もしかして
「あの日、俺もたまたま仕事終わりに
車に乗ってただけだった」
「でもいつもこっちに目を向けないゆりが
初めて車に目を向けた時、このままだと
闇に飲み込まれそうな目をしていた」
そんな風に見えていたのか
「その時決めたんだ、ゆりは何があっても
俺が助けて幸せにしようと」
涙が流れた
「まあ、一目惚れしたって言うのもあるが」
「初めて見た時から思っていた」
「ゆりは俺が幸せにしてやりたいって」
涙が止まらない
すごい気持ち悪い奴にこんなこと言われたら
嫌な気持ちになるんだろうけど
こんなに容姿も綺麗で
私のことを心底心配してくれて
いつも見守っていてくれた人に
こんなこと言われると胸が苦しくなる
嬉しい、、、