『ねぇ、梶谷君』【現代・短編】
梶谷君がポケットからハンカチを取り出しながら立ち上がった。
ハンカチを私の手に握らせようとして土だらけの手を見て断念した模様。
すると、次に、梶谷君は私の前髪を片手でかきあげ、額にハンカチを当てた。
「うわっ、いいよ、ハンカチ汚れちゃうからっ、あの、後で顔を洗えば平気だからっ!」
顔をそむけてハンカチから逃げる。
「そんな顔してウロウロしてたら、入部希望者が来てもびっくりして逃げちゃうけどいいの?」
「それは困るっ!っていうか、そんなにひどいことになってるの?」
梶谷君は私の質問に答える代わりに、楽しそうに笑った。
「じっとして」
言われるままに、じっとしてみたものの、正面至近距離の男の子に顔を触られるとか……、めっちゃ、めっちゃ恥ずかしいっ!
額をハンカチで三度ほど撫でるように拭かれ、そのあと前髪もぱさぱさと土を払いのけて整えてくれた。
「はい。もう動いていいよ」
ぷはっ。
はぁーーーっ!
思わず息を止めちゃったから、終わったと同時に思いっきり息を吸いながら、しゃがみ込んだ。
「どうしたの?」
心配そうに梶谷君が、しゃがみ込んだ私に声をかける。
「うん、何でもない。異性に触れられるの慣れてなくて、息を止めすぎただけ……。笑っていいよ」
しゃがみ込んだ状態で息を整え、顔を上げる。
「ごめん……。ちょっと、一般的な高校生の男女の距離感が、経験不足で分からなくて」
はい?経験不足?
どちらかというと、経験豊富な人の動作にしか見えませんでしたが……。
「あの、私こそごめんね。親切で拭いてもらったのに……。困らせる反応しちゃって。こんなところで一人で草木に話しかけてる高校生は、一般的じゃないんで、気にしないで」
「話しかけてるの?」
梶谷君がびっくりした顔をしてる。
ハンカチを私の手に握らせようとして土だらけの手を見て断念した模様。
すると、次に、梶谷君は私の前髪を片手でかきあげ、額にハンカチを当てた。
「うわっ、いいよ、ハンカチ汚れちゃうからっ、あの、後で顔を洗えば平気だからっ!」
顔をそむけてハンカチから逃げる。
「そんな顔してウロウロしてたら、入部希望者が来てもびっくりして逃げちゃうけどいいの?」
「それは困るっ!っていうか、そんなにひどいことになってるの?」
梶谷君は私の質問に答える代わりに、楽しそうに笑った。
「じっとして」
言われるままに、じっとしてみたものの、正面至近距離の男の子に顔を触られるとか……、めっちゃ、めっちゃ恥ずかしいっ!
額をハンカチで三度ほど撫でるように拭かれ、そのあと前髪もぱさぱさと土を払いのけて整えてくれた。
「はい。もう動いていいよ」
ぷはっ。
はぁーーーっ!
思わず息を止めちゃったから、終わったと同時に思いっきり息を吸いながら、しゃがみ込んだ。
「どうしたの?」
心配そうに梶谷君が、しゃがみ込んだ私に声をかける。
「うん、何でもない。異性に触れられるの慣れてなくて、息を止めすぎただけ……。笑っていいよ」
しゃがみ込んだ状態で息を整え、顔を上げる。
「ごめん……。ちょっと、一般的な高校生の男女の距離感が、経験不足で分からなくて」
はい?経験不足?
どちらかというと、経験豊富な人の動作にしか見えませんでしたが……。
「あの、私こそごめんね。親切で拭いてもらったのに……。困らせる反応しちゃって。こんなところで一人で草木に話しかけてる高校生は、一般的じゃないんで、気にしないで」
「話しかけてるの?」
梶谷君がびっくりした顔をしてる。