ちゅ、


碧くんも私の前の恋愛話を聞いてるからそれ以上迫ってこない


もどかしく思いつつ、飲み続けて、ふと碧くんが終電大丈夫?と心配した


時間を確認すると23時半


「まだ30分以上あるから大丈夫」


「そっか、俺終電逃したわ」


「えっ?」


「あ、別に大丈夫だから!そっちは大丈夫かなって確認しただけ」


碧くんは笑いながらそう言う


「じゃあ始発まで私も帰らない」


「いいよ、大丈夫、ちゃんと帰りな」


「じゃあ私が帰ったあとどうすんの?」


「漫喫でもネカフェでもどこでも寝るとこはあるから」


「それじゃ、楽しくないじゃん」


帰らないとごねる私、帰りなと諭す碧くん


結局碧くんが折れて、私も朝まで一緒に過ごすことになった


「とりあえずお手洗い」


私がそう言って席を立って戻ってくるとお会計が終わってて、碧くんは金額を教えてくれなかった


二軒目はすぐ近くの立ち飲みバーに入った


そこでも「まだ終電間に合うんじゃない?」と何度も聞かれたけど、「帰らないからいいの」とわがままを押し通した


「すごい先の話だけどさ、もしここ二人で子供産まれたらすごい溺愛すると思うんだよね」


遠慮がちに言う碧くんが愛おしくて仕方なかった


「わかる、どっちも怒れないからダメ人間製造機になりそう」


笑いながらそう返す


一時間ほどしてそのお店を出た


「次どこにしよっか」


「本当に帰らなくていいの?」


「もう終電なくなったよ」


私がそう言うと、碧くんが立ち止まった


「俺はもう、茜と付き合いたいと思ってる」


「それ、今言うの?」


嬉しいのに茶化してしまう


どうやったら素直に「わかった、付き合おう」って言えるのか、わからなくなった


私が思ってる以上に前の経験が尾を引いている


もう失敗したくない

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